ピアノ弾く時、手を自然な状態にして鍵盤の上に乗せると、親指・小指付近は白い鍵盤近くに、234の指(主に人差し指&中指)は、黒い鍵盤の上に乗ります。
(どこに手を置くかにも寄りますが)
そう考えると、みんなが好きな(なんで好きなのか分かりませんが)いわゆるCメジャーの「ドレミファソラシドぉ~」は、手の自然な形を崩して弾かないといけなくなります。
手の形から考えると、Eメジャー(ミ~から始まる音階)G♭またはF#メジャー(ソ♭またはファ#から始まる音階)B♭またはBメジャー(シ♭またはシから始まる音階)などが、鍵盤楽器の上で、手の形に適した動きをする流れなんだなぁ、とつくづく思います。
けれど、巷では「バイエルから弾ける!」「簡単!ハ長調シリーズ!」みたいな楽譜がけっこう多いです。
ハ長調(Cメジャー)から入るのが、なんでそんなに単純に簡単だと言っているかというと、それは、白い鍵盤を主に弾くだけで、黒い鍵盤、つまりフラット(♭)やシャープ(#)がほとんど出てこないので、「楽譜」が簡単だから、簡単だ、というのですが・・・ほんとに簡単か?と疑ってしまいます。
今、私は、主に「Cメジャー」を基調とした曲を弾いたり、Cメジャーに関連する指の動きを練習しております。
・・・けっこう難しいんですよコレが!
3の指(中指)が、山頂のごとく突き出ております。手のかからない子供だったしっかりモノのお兄さんは力持ちで、頼れる兄貴分。だいたいのことはなんでもこなせます。
5の指(小指)は一番短く、申し訳なさそうに引っ込んでおります。力も弱いです。将来は大物になりそうな子供みたい。実は大黒柱的な要素もあり、一番鍛えにくく、かつ重要な指であります。
1の指(親指)は太くて小指よりも奥に引っ込んでおります。力はありますが、ちょっとデクのボウ的な、お山の大将的な存在だったりします。でも馬鹿力はNO1です。
4の指(薬指)は一見、華奢なレディの恰好ですが、実は筋肉質なお姉さん。なおかつ5本の指の中では、NO1の繊細さを持っており、この指を効果的に使うと、音に透明感が出てきます。重要な聴かせ所伸ばしメロディ~には必ず使いましょう。隠し技も多様で、実は一番器用な指。
2の指(人指し指)は、3の指の兄貴の弟分であり、かつしっかり者の末っ子のようでもあり、主役のようでもありつつ、実は脇役であり、けれどついつい主役を殺して、前へ出てしまう性質がある目立ちたがり屋なので、注意しないといけない指です。
この性質は、1の親指君もあわせもっており、「困ったちゃん兄弟」だという認識が必要。1と2は力を入れなくても強い音が出てしまいますので注意です。
・・・とまぁ、こんな感じで、指の性質をこのようにいつも認識して使うのが、良い音と立体的な演奏を作る秘訣と言えます。
そして、みんなが大好き、クラシック音楽のショパン様の曲は、あらゆる意味で「指殺し」でもあり「オリンピック指選手」でなければいけない要素が多くて、大変です。
けれど、ショパン様は、他の作曲家たちと比べても群を抜いてピアノのことを知り尽くしており、さすが、わかっていらっしゃる!とばかりに、ハ長調(Cメジャー)の曲が異様に少ないです。
ですから、ピアノの神様、ショパン様の作る曲は、一見難しそうに見えますが(難しいですが)、弾いている時は、なんともいえない、指の自然な動き、ピアノらしい、ピアノのために最善を尽くした動きをすることが多いので、「ショパンが上手に弾ける=ピアノが上手」というバロメーターとされているようなのです。
世にも有名な「ショパンコンクール」の威力は、ピアノを知り尽くしたショパン様の曲を弾く競技だからこそ、異議があるように思います。いわば、ショパン様は「ピアノ専門」作曲家なのです。
ですので、ピアノが専門ではなかった方たちの作るピアノ曲を弾く時には、どうにも弾きにくいところが散見され、簡単そうに見えるのに、なぜかとっても難しい、という変な感覚が致します。
その昔、ピアノの発表会で弾く曲に選んだ、シューベルトの即興曲。「作品142-3」が、それです。どうにも弾きにくかったですが、ピアノの先生いわく、シューベルトは歌曲の人で、専門は弦楽器だから、音があっちこっち飛んで弾きにくいんだよね~。とのこと。なるほど、納得したのを覚えています。
ですから、話を元に戻しますと、ピアノ曲というのは、ピアノを知っている人が作った曲の場合、Cメジャー、ハ長調は実はとっても少ない調性なのです。
いえ、少なくはないですが、決して多くはないのです。ピアノ曲で自然の流れが心地よい、いい曲は、たいがいフラット(♭)やシャープ(#)がいっぱい付いてきます。
楽譜の上では一見難しそうなものが、実は、一番、人間の指にとっては優しい動きが多いのです。
そんなわけで、数ある曲の中から、指を鍛えるために、と思ってピアノ曲を選ぶ場合、一番初心者にとって優しいのは、個人的には、Cメジャー(ハ長調)ではなく、Eメジャー(ホ長調)だと自負しております!
指をもっとピアノに適した指にしていきたい、と思って運動的な訓練をする時、J.S.バッハやヘンデルなどの曲をチョイスしたら、私はあえて、Eメジャーの曲を選んだりします。隠れ初心者コードだからです・・・。
白い鍵盤、黒い鍵盤が、丁度半分半分くらいの配分で、手の自然な形に無理のない音の流れが多いので、長時間弾いていても指を壊しません。
分散和音にした時も、Cメジャーの和音より、Eメジャーの和音の方が弾きやすいです。
難しそうなパッセージ(音の流れ)が出てきた時も、Cメジャーの時は、突然ソ#(G#)の音が出現する率が高く、白い鍵盤だらけの中にあって、いきなりポコっと黒い鍵盤が出てしまうため、難易度が高くなります。
指の性質、CメジャーやEメジャー、などの調性の特質を意識して、無理のない力で自然に、指の力を付けていかないと、指を痛めてしまうので注意したいところです。
ちまたで騒がれている「バイエルで弾ける」や「ハ長調で弾ける」に惑わされず、自分の体と指とよく会話して、もともとの弱い指や強い指の長所と短所を知りつくしてから、効果的なピアノの特訓をした方が絶対に良いです。
しかし・・・ショパンは5の指(小指)と、4の指(薬指)が強くないといけない、という過酷な試練が待っている・・・!
さすがはピアノ専門ショパン様でございます。鍛え方が違いますね・・・。さぁ今日も練習、練習!